本日の名言☆綿矢りさ著「しょうがの味は熱い」より引用。
昔好きだったバンドの曲が、朝、出張先のホテルのラジオから流れてきて、おっまだ活躍してたのか、すごいなぁと思い仕度する手を止めて聴いたが、サビまで聴いても心の波長と合わなくて、間奏で退屈になった。熱中して聴いた昔の曲とメロディがすごく似ていて、いかにも同じ人が作ったって感じだけれどどこか少し違っていて、盛り上がらなくて、でも彼らの音楽のどこが変わったのかうまく説明できない。彼ら自身も分からないかもしれない。もしくは彼らは同じ音楽をやり続けているのに僕が変わっただけで、彼らの音楽に昔の僕みたいに夢中になっている若い人たちがたくさんいるかもしれない。でも彼らの売り上げが落ちていることは確かだ。
時間もあんまり無いし、と仕度を再開してカッターシャツを羽織り、ネクタイを締める。ベッドに座って革靴の紐を結び終わっても最後まで聴き続けた。彼らと同じように、僕だっていつまでも同じところにとどまっていられない。僕らも彼らも成長しているのかその反対なのか分からなくても、歩き続けるしかない。
- 作者: 綿矢りさ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/12/01
- メディア: 単行本
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